AmazonとVisaは、**Agentic Commerce(エージェンティック・コマース)**と呼ばれる次世代のオンライン購買モデルを加速させるため、戦略的パートナーシップを発表した。
Agentic Commerceとは、人工知能(AI)エージェントが消費者に代わって商品を検索し、判断し、決済までを自律的に行う新しいコマースの形である。
世界最大級のEコマースプラットフォームと、米国最大のカードネットワークが連携することで、AI主導の購買・決済体験を支える基盤構築が進められる。

AmazonとVisaが共同で構築するもの
両社の共同発表によると、AmazonとVisaはAmazon Web Services(AWS)を通じて、新たな開発ツールを提供する予定だ。
AIエージェントによる自律的な取引フロー
これらのツールは、AIエージェントがユーザーの設定した支出ルールや嗜好、上限金額に従い、取引を自律的に完了できるよう設計されている。
具体的なローンチ時期は明らかにされていないものの、両社は「AIが消費者の代理として、安全かつ信頼性の高い決済を行う次世代体験」を目標に掲げている。
また、AmazonとVisaはExpedia GroupやIntuitといったパートナーとも連携し、小売、旅行、B2B決済といった分野への展開を進めている。
Visaが描くAI主導の決済戦略
Visaは今年に入り、AIを活用したコマースの将来像について積極的に発信している。
4月には、AIエージェントが人の操作なしに購入を実行できるAI対応Visaカードの開発を公式に認めた。
自律型AIエージェント向けVisaカード
VisaのCEOであるライアン・マキナニー氏は、これらの機能が「近いうちに」消費者の目に触れるようになると述べているが、具体的な時期は明示されていない。
10月には、AIエージェントによる購買を安全に管理するためのプロトコルやガバナンスについても言及がなされた。
さらに、最近のフィンテック投資家向けカンファレンスでは、CFOのクリス・スー氏が、Agentic Commerceやステーブルコイン分野への投資が決済業界全体で加速していることを強調した。
広がるAgentic Shoppingへの競争
AmazonとVisaだけでなく、PayPal、Stripe、Fiserv、Worldpay、Mastercardなど、決済・フィンテック業界の主要企業もAI主導の購買体験に向けた開発を進めている。
AIエージェントが担う役割
将来的に、これらのAIエージェントは以下のような業務を担うと期待されている。
価格比較
商品選定
サブスクリプション管理
自動決済の実行
すべては、消費者が事前に設定したルールと条件に基づいて行われる。
法的・実務的な課題も残る
一方で、Agentic Commerceには未解決の課題も多い。
Amazonは最近、AIスタートアップのPerplexityに対し、AIアシスタントの不適切な利用を理由に訴訟を起こしており、自律型エージェントとマーケットプレイスの関係性が注目されている。
自律型購買に伴うリスク
AIが誤った購入を行った場合、返品や返金の責任は誰が負うのか、消費者保護はどう担保されるのかといった問題は、依然として明確な答えが出ていない。
こうした点が、完全自律型ショッピングの本格普及を慎重にさせている要因の一つとなっている。
なぜAgentic Commerceが重要なのか
Agentic Commerceは、デジタル決済とオンライン購買の在り方を根本から変える可能性を持つ。
消費者は自ら商品を探し、決済する代わりに、AIエージェントに意思決定を委ねることで、時間を節約し、より合理的な購買が可能になる。
AmazonとVisaにとって、この協業はAI、決済、コマース基盤が融合する新しいエコシステムの中心的存在となることを意味している。
まとめ
AmazonとVisaの提携は、Agentic Commerceを実用段階へと押し進める重要なシグナルと言える。
大規模な普及にはまだ時間が必要とされるものの、現在開発されている技術は、今後のオンラインショッピングと決済体験を形作る基盤となるだろう。
AIエージェントの進化と決済ネットワークの柔軟化が進む中、将来のコマースは「今すぐ購入」ボタンを押す行為から、知的システムに購買を任せる体験へと移行していく可能性が高い。

